父親が引越しするといったのは、家族を、私を、悪徳宗教団体から守るために、二人で決めたことでした。

引越しによって家族と離れる場合

引越しによって家族と離れる場合

引越した家族を送ること

「新しい家に行くことになった」父親の言葉に、私はにわかに戦慄したことを、今もまだ覚えています。新しい家に行く、この言葉の意味が、意図が、幼い私にはよくわかりませんでした。ただひたすらに、ここに残っていたいと、そう思っていました。母親は少し異常なのだと、父親は言いました。もうお母さんと一緒にいることは出来ないんだと、父親は続けました。だから今から新しい家に行くんだよと、父親はわけのわからないことを言い続けました。父親も悲しんでいることは、その目から判断できました。でも、そのときの私は、それがとても恐ろしいことで、みんなそうしていて、私だけがこの境遇にいるわけではないことなんてわからなかったのです。私の母親は、悪徳宗教にはまっていました。いくらお金を取られても、それは続きました。

父親は嫌がる私を無理やり連れて行きました。そして、何日か過ぎた後、テレビに母親の居た宗教団体がつかまったことを報道しました。私はそれを見て驚愕しました。つかまったのは私の母親でした。私は刑務所に行きました。母親の収容されていた刑務所に、そして母親との面会を取り付けてもらいました。父親が手伝ってくれました。母親はうつろな目で、何かぶつぶついっていました。私は母親に呼びかけました。何度も何度も、何日も、尾きりことなく呼びかけました。父親が引越ししようと言ったとき、私はなぜなのかわかりませんでした。けれど、その理由がようやくわかりました。家族を守るため、ひいては、私を守るためでした。

Copyright (C)2017引越しによって家族と離れる場合.All rights reserved.